Tuesday, March 23, 2010

二宮正治:小説 キャシーは私が好きだとその昔に言った。

 広島にアメリカから中年の英語教師が来た。私はもし彼女が日本語が出来なくて困ってはいけないと思い、新任の英語教師パーティーに出かけた。
「キャシーか、懐かしい名前だ」
 こう思いながら、セイジは挨拶をしにキャシーに近寄った。
「ナイス・トゥー・ミーチュー(お会いできてうれしいです)」
 私は顔を見て驚いた。若き日のセイジのガールフレンド、キャーシー・ウイリアムズだったからである。キャシーもセイジを見て、驚いたように、
「オウ、セイジ、ハウ・アー・ユー(ご機嫌いかが)」
 と言葉を返した。
「ああ、やっぱりキャシーだったか」
 セイジは懐かしさがこみ上げてきた。そして、雪の降る日に悲しく別れた日の記憶が蘇ってきたのである。
「もう三十年前か・・・・・・・」
 セイジは感慨深かった。
「あっという間に時が過ぎてしまった」
 セイジはキャシーに、
「You, still young.(君はいまだに若い)」
 と言うと、キャシーは、
「You,too.(あなたも)」
 と微笑みながら言葉を返してきた。
「thank you.(ありがとう)」
 二人の間に昔のタイミングが早くも戻ってきたのだった。