Sunday, January 31, 2010

小説 五十六歳の青春 第二回

 由香里は五十五歳で離婚して一年以上が過ぎた。最近では、
「あまりの寂しさに夜寝れなくなっていた」 
 この厳しい現実と戦っていたのである。
「誰か私を愛して」
 こう叫んでみても誰も相手にしてくれる男性はいなかった。
「ボーイハントでもするか」
 街に出て男を漁ってみたりもしたが、
「おばちゃん、いい加減にしなよ。見苦しいよ」
 とたしなめられる始末だった。
 そして、驚いた事に、
「この人(男性)だけは私の気持ちを分かってくれる」
 こう思いこんでいた男性に、
「すべて冷たくされた」
 この厳しい現実に直面していたのである。
「これが五十六歳の現実か」
 日に日に由香里の酒量は増えて行くのだった。

Saturday, January 30, 2010

小説 五十六歳の青春 第一回

「誰か私を愛して」
 泣きながらは由香里は街をさまよい歩いた。だが、だれも由香里に優しい言葉をかけてくれる者はいなかった。
「私の人生も終わりか」
 こう思ったら涙が溢れて止まらなくなった。
高校時代の同級生で初体験の相手に携帯電話で連絡をとったら、
「いいかげんにしろ」
 と怒鳴られてしまった。
由香里は熟年離婚をして、一年が過ぎた。愛のない結婚生活にくたぶれ果てて、
「離婚をしたら素晴らしい生活が始まる」
 と夢を描いていた。
だが、
「夢のような素晴らしい生活」
 どころか、
「恐ろしいまでの孤独」
 が由香里の全身を襲ってきたのであった。
「誰か何とかして」
 激しい思いが由香里の心の底にあったが、回りの人は、
「おばさんが酔っ払っている」
 としか見ていなかった。