Saturday, January 30, 2010

小説 五十六歳の青春 第一回

「誰か私を愛して」
 泣きながらは由香里は街をさまよい歩いた。だが、だれも由香里に優しい言葉をかけてくれる者はいなかった。
「私の人生も終わりか」
 こう思ったら涙が溢れて止まらなくなった。
高校時代の同級生で初体験の相手に携帯電話で連絡をとったら、
「いいかげんにしろ」
 と怒鳴られてしまった。
由香里は熟年離婚をして、一年が過ぎた。愛のない結婚生活にくたぶれ果てて、
「離婚をしたら素晴らしい生活が始まる」
 と夢を描いていた。
だが、
「夢のような素晴らしい生活」
 どころか、
「恐ろしいまでの孤独」
 が由香里の全身を襲ってきたのであった。
「誰か何とかして」
 激しい思いが由香里の心の底にあったが、回りの人は、
「おばさんが酔っ払っている」
 としか見ていなかった。 

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