Tuesday, February 9, 2010

小説 五十六歳の青春 第9回

 由香里は少年との愛の交わりで一時的には寂しさを紛らわす事はできた。だが、一人になるとまた、
「恐ろしいまでの孤独」
 が襲ってくるのだった。
「ああ、残りの人生を二人三脚で歩いてくれる男性が欲しい」
 心の底から由香里はこう思うのである。
回りの人も心配して再婚を勧めてくれるのだが、相手はみな六十五歳を越した男性であった。顔色を変えると、
「あなたは今年五十七歳でしょう」
 と露骨に嫌な顔をされた。
「私は昭和二十八年の生まれ、戦前生まれの男性とは話は合わない」
 回りの人に本音をこう吐露するのだが、聞いてくれる人はいなかった。それどころか、
「鏡を見ろ」
 と露骨にイヤミを言う人もいたのである。由香里がもっとも情けなかったのは、
「自分の同年輩の男性が自分の事をゾンビでも見るような目つきで見る」
 この事であった。

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