Tuesday, February 2, 2010

小説 五十六歳の青春 第四回

 週末にスナックに行って由香里は七十歳くらいの男性と知り合いになった。会話の途中で由香里の事を、
「おねえさん、おねえさん」
 と呼んでくれた時には、不覚にも涙がこぼれたのだった。久しぶりにその言葉を言ってもらったからである。
「うれしい」
 由香里は本音を吐露した。やがて二人は夜の恋人達の宿へと足を勧めた。
この七十歳の男性は由香里を必死で愛してくれて、由香里も必死で、
「うっふん、うっふん・・・・・」
 とムードを出したが、喜びを得る事は出来なかった。
「心のもやもや」
 を晴らす事はできなかったのだ。
「私の歳ではもう恋をささやく事は出来ないのか」
「そんな事はない」
 自問自答の日々が続くのである。

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