由香里は長年初体験の相手に再会したいと思っていた。初体験の相手がいつも心の中に宿っていたのである。
「あの人だけは私の気持ちを分かってくれるはず」
こう思っていた。
だが連絡を取ってみると、
「何で連絡して来るんだ。おれの生活をぶち壊す気か」
と烈火のごとく怒るのだった。
「ああ、思い出は思い出として残しておこう。過去を振り返ってはだめだ。厳しい現実を見つめて生きないと」
由香里は頭ではこう自分自身を納得させても、
「素晴らしい恋をしたい」
この思いが失せる事はなかった。
だが、
「この人はすばらしい」
と思う人は必ず奥さんや恋人がいるという、厳しい現実が由香里を苦しめるのである。
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