Thursday, August 19, 2010

英語教師、久雄の苦悩 第3回 8月19日

 英語教師の田中久雄は、自分の英語の発音の能力を落とさない為に、
「AFN放送(米軍放送)」
 を聞いていた。
ある時ディスク・ジョッキーが、その放送の中で、
「日本人はピンクをピンクウと言うよ。(アメリカ人が聞いたらpinkは完璧にpinkuに聞こえる)」
 と言っていた。
久雄はこれを聞いて、
「フー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 とため息をつくのだった。
「おれのせいじゃないよな。おれのせいじゃない」
 と自分を慰めるようにこう言ったのである。
アメリカ人にしても、日本人のこの発音を聞くと辛いのである。
「慣れればどうと言う事はないが、それまでが大変である」
 久雄はアメリカのプロ野球の球団が日本に来た時、通訳をしたが、アメリカの選手は日本人の発音
「ストライクウ、ボウルウ・・・・・・等々」
 に相当にとまどっていた。
「とても、strike,ball・・・・・・・・」
 には聞こえないのである。
「せめて日本の英語教師がきちっと発音する事ができたなら」
 いつも久雄にはこの思いがあったが、現実は厳しくどうする事もできなかった。
「おれのせじゃない」
 と言って、作り笑いを浮かべるのが久雄に唯一できる事だった。

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