Friday, August 20, 2010

英語教師、久雄の苦悩 第4回 8月20日

 久雄は生徒達にスタンダードの名曲
"It's a sin to tell a lie."(嘘は罪)
 を唄って聞かせた。
生徒達はこの曲を知っていて吹奏楽部の生徒達が、
「先生、良かったら伴奏をさせてください」
 と言ったのである。
英語の授業が久雄のミニコンサートになったのだった。
 久雄が、
"It's been a long long time."(ひさしぶりね)
 を唄うと生徒達の興奮は最高潮に達した。
久雄は、
「みんなこの歌はね、長い時間キスをしてくれといっているんじゃないよ。ずいぶんお久しぶりねと言っているんだよ」
 と言うと、
「分かっている、分かっている」
 と言葉を返してきた。
楽しいひと時だった。
 授業の最後に、
「ところで君達、sinとthinの発音の違いを実際に使い分けられるか」
 と聞くと、英語好きの生徒達が次々とチャレンジしたが、
「アメリカで暮らした事のある生徒以外は、やはり誰一人この二つの単語を使い分ける事が出来なかった」
 久雄は苦笑しながら、
「僕のやらなければいけないことは数多い」
 と自分に言い聞かすのだった。

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