Saturday, August 21, 2010

英語教師、久雄の苦悩 第5回 8月21日

 久雄は英語教師の研修会で、"birthday"の発音をしっかしと徹底する事を提案したのだった。
この単語の発音は、簡単そうで日本人にとって簡単ではないのである。多くの英語教師が、久雄の提案に賛成をしてくれたのだった。
 だが、英語教師とて実際にやってみると、
「正確に発音できる教師はごくわずかだった」
 ほとんどの英語教師は、
「あまりに正確に教え込んでも、生徒がついてこない」
 と苦しい言い訳をしていた。
「英語は英語だ、正しい発音を教えないと」
 久雄はこう主張したかったが、あまりにも正義を主張して孤立しても特にならない思い、これ以上の主張を避けたのだった。
 その日、知り合いのアメリカ人に誕生日の人がいて、"Happy birthday"と言うときれいな発音で、同じ単語が返って来た。
「英語は英語だ、日本ではない」
 自分に言い聞かすように久雄はつぶやいた。

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