「誰にも後ろ指を指されない恋人を見つけよう」
娘の初体験の相手正雄に逢いたくて仕方がなかったが、今後の事を考えて恵子は思いとどまった。そしてこう思ったのである。
繁華街を歩いて若い女の子がするように男性の気を引いたのだった。
「自分の初恋の相手に似ている三十歳くらいの男性に勇気を出して声をかけた」
恵子のハンティングは上手くいったかに見えた。だが、パトカーのサイレンが聞こえた恵子は胸騒ぎがした。
「ひょっとして自分のところに来ているのかも」
恵子の勘は当たっていた。
ビルの谷間に隠れてじっとしていると、パトカーの無線が聞こえてくる。
「推定年齢70歳くらい女性、挙動不審・・・・・・・」
恵子はため息をついた。
「警察のご厄介だけにはなりたくない」
冷や汗が出た。
「女は年を取るとごみの扱いか」
こう呟いてまた溜息をフーと吐くのだった。
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