Saturday, January 29, 2011

問題小説 恵子の最終楽章 第8回

「おばさん、お金くれるんなら遊んでやっていいよ」
 まだあどけない少年が恵子に声をかけてきた。
「あんた年いくつ」
 恵子が少年に聞いた。
「十八歳」
「うそ」
 押し問答が続いた。
「どう見ても中学生である」
 恵子は自分自身に腹が立った。
「なめられたもんだ、足元を見られた」
 恵子は歩きながら、
「夫が生きていたらこんな寂しい思いをしなくてすんだのに。なんで私だけこんなに寂しいのだろう」
 自問自答したが、答えが出るはずもなかった。

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