Friday, January 28, 2011

問題小説 恵子の最終楽章 第7回

「おばあちゃん、むやみやたらに男を釣ったら駄目だよ」
 十代の突っ張り少女が声をかけてきた。
「なんで・・・・」
 恵子は少女の言葉の意味が分からなかった。
「この街をよく見てごらん、みんな孤独な女が幸せになろうと男を釣りに掛かっているんだよ。新入りがほいさっさと男が釣れるような街じゃないんだよ。この街は」
 少女の言葉に、改めて恵子が回りをよく見渡してみると、
「老いも若かきも孤独な女がそこらここらで目を光らせていた」
 恵子は、
「ほんとだ」
 と突っ張り少女にこう言うと、
「何がほんとだよ、のんきだねえ」
 と呆れたように言葉を返すのだった。
「みんな孤独で辛い」
 恵子は昔流行った歌、真夜中のギターの一節を思い出していた。

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